小規模な制作会社に入社して感じたメリット・デメリット

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この記事は2019年以前他サイトに執筆したものを引越し掲載しています。

この記事では小規模なWeb制作会社に入ってみて感じた長所短所をまとめてみました。

制作会社を就職先として検討している方の参考になればと思います。

目次

大きな制作会社と小さな制作会社って何が違うの?

Web制作会社の大小、一概には言えませんが割合として以下の傾向があるようです。

  • 大きな会社…複数人の制作チーム、専門に応じて分業化
  • 小さな会社…一人で広い工程を作業

違うのは仕事の担当範囲。大きな会社は分業制で制作チームの中の一メンバーとしてデザイナーをやることが多いようです。ディレクターの指示で進めていき、コーダーが分かれているパターンもあります(ディレクター1:デザイナー1:コーダー2とか)。

一方小さな会社はチームが組めないので、ディレクションから納品その後の保守まで全部一人で担当する確率が高いです。※ただ小さな会社に入っても他の協力会社と一緒に大きな制作チームの一員として動くなどはあります。

目指す将来像と性格から考える向き不向き

自分に合うところを探すイメージはこれ。横に将来像、縦に性格を取って分けてみました。

向き不向きのマトリクス
小さな制作会社…自由・個人、広範
大きな制作会社…ルール・みんなで、専門

※画像はあくまで自分が思う傾向なので、もちろん会社によって違います。

大きな制作チームで経験を積んで、デザイナーからディレクターにシフトするといったキャリアの考え方もあります。

以下目指したい将来像(キャリアの方向性)から考える、小規模な会社のメリット・デメリットです。

小規模な制作会社で感じるメリット、よかったこと

今の(小規模な)会社に入って感じたメリットは広く浅くWebに関する知識を伸ばせることです。ディレクションからコーディング・開発、保守まで全部一人で担当するので必然的にWeb全般に詳しくなっていきます。

担当範囲は会社それぞれでしょうが、傾向として人数が少ない方が広くいろんなことをやる可能性が高いと思います。

特にCMS(ほぼWordPress)化の希望が多いのでPHPも必要だし、動的なプログラム部分も必要に応じてやります。このあたりはまだまだ出だしでほとんどわかってはいませんが、3か月でいろいろな分野の基礎をかじりました。今後のポジティブな見通しとしては、Web全般の知識をもとにして、総合的な制作力を上げられそう。全ポジション経験していることにはなるので、将来チームで働くとしてもディレクターやプログラマーの立場に立った仕事ができるようになれそう、といったところです。

いろいろ経験していく中でディレクターになりたいとか、フロントエンドエンジニアになりたいみたいになる可能性もあるので、その辺で迷っている人は小さい会社も経験してみるのがいいかも…と感じます。 もちろん制作チームでその道のプロフェッショナルと接して考えるのもいいと思いますが、自分で経験できるのはやはり大きいです。

小さい制作会社で感じているデメリット、不安なこと

もちろん、デメリットや不安もあります。というかこちらの方が多いです。

1.デザイン業務に集中できない

日常業務で保守が結構あります。具体的には、サイトの定期更新や臨時の修正、報告書作成、CMSの操作の問い合わせなど。ディレクターがいないのでダイレクトにメールや電話がバンバン入ってきてメイン案件に集中できない日も多いです。

新規案件が納期前というタイミングで、保守サイトで問題が起きたりするときついです。

保守業務の割合について…私のところは保守が多い会社(保守というのは作った後サイトの管理をする契約。制作会社の重要な収益源の一つ。)です。もしこれから就活する人は保守業務の割合を聞いてみるといいかも。ある程度ルーチンワークがある方がいいなら保守多めの方がいいかもだし、とにかく新規でバリバリ作ってスキル上げたい人は逆がいいと思うので。

しかも新規案件に関わる時間のうち、ディレクションとかWordPress構築とかもやるわけなので、デザインカンプ作成などWebデザイナーのイメージでまず出てくるような仕事はごく一部に過ぎない感じです。

そんなわけで、3か月でWebに関する広い知識はかなりついてきた一方、肝心なデザイン力やAdobeソフトのスキルはあまり上がっていないです。もちろん年々この辺も向上できると思いますが、時間はかかりそうです。

というわけで、Webデザイナーのコア業務に集中したい!という人は大きな会社で制作チームに入るほうがよさそう。

2.自己流のスキルアップしかできない

これはデメリットでもあるし、正直今後の成長を考えると少し不安です。チームで動いていないので、ディレクターやコーダーからのダメ出し・指摘などがありません

クライアントから直でクレームとかダメ出しが来る。お客さんは論理的な理由とかはくれないので問題の核心はよくわからなかったり。

また一人でやっているのでついつい自分ができる範囲、わかるやり方で済ませようとしてしまうっていうのもあります。ディレクションやコーディングも自分だけがわかればいいので雑(保守性や一貫性を重視しないという意味で)になってしまいます。

あとは社内が少人数だと技術やセンスを盗むということが難しい。上司は技術が高いと思いますが、たぶんWebデザインの場合は一人の高スキルの人よりたくさんの中程度スキルの人と接する方がはやく成長できると思います。答えはたくさんあるし、広すぎて全部知っている人はいない世界なので。

というわけで先輩方からの客観的な学びを得る機会が多いのは、やはり大きな会社・制作チームだろうなと思います。

自分で考えるのが好き→小規模向き?

次は性格のお話。やっぱり自分らしく働けるか、性に合ってるかって大事ですよね。

小さな会社は一人で仕事をするので、とにかく自分で考えるのが好きな性格・主体的にいろいろ試したい人が向いていると思います。といってもデザイン自体ではなくて、仕事の進め方とか新しい技術を試してみようかなとかそういう全般的なこと。(以下裁量労働制の私の会社を例にして話をすすめてしまいます。)

なにしろ全工程担当が自分一人ということは、クライアントからの要件と納期しかルールがないわけです。一言でいうと超自由。その代わりもちろん責任も全部自分。

スケジュールややり方を決められたくない人は一人制作〇

どの工程にどれくらい時間を割くか、スケジューリングは全部自分しだい。場合によって納期の交渉や工数(=受注額の判断)自体も自分しだい。

一つの案件が終わったら次が動き出す、というわけではなく制作は並行して複数やっています。サイトAの最終的な修正をしてクライアントの返答を待ちながら、サイトBのデザインカンプ作りつつ、次の案件Cのディレクション(お客様の要望を聞く)とか。プラス日常の保守もあるので、力配分・段取りが大事です。前後の工程を別の人が担当していない、かつ保守も自分…ということは技術面での仕事のやり方もすべて自由です。

とにかくどんなやり方でもクライアントが満足してくれてOKくれればいいので。私のところは社内ルール的なものはなにも蓄積されてないので(泣)、ディレクション時のヒアリング項目とか方針もないし、コーディングルールとかもないです。社内のノウハウや指導が充実していればそれに従えばいいかもしれませんが、小さい会社でそれは少ないと思います。

これらが苦ではなくむしろルールに縛られるよりは良いという人は小規模な会社向きかも。

デザイナー兼○○の場合、時間の配分(妥協)がキモ

デザイナーという言葉のイメージ通り、芸術家・職人気質の人も中にはいるWebデザイナー職。一人で全工程やるということは、自由な分いくらでもデザイン工程に時間を投下できてしまいます。でもそれをやると後の仕事や工程が大変なことになります。

今私が迷うことが多いのは、全スケジュールや進行状況などとの兼ね合いをみてデザインにかける時間配分(ある意味妥協点)を自分で決めなければならない点です。完璧に作り込むのが好きな人はデザインのコア業務に集中できないとストレスが多いかもしれません。

あとは責任についても工程で分業してない分すべてが自分の責任なので、そのへん重圧に感じそうならやめといた方がいいかも。

チームではないから途中で社内の目が一切入らないですし。特に複数案件同時進行してると常にある程度のプレッシャーはかかった状態です。

小さな制作会社(一人制作)に合わない性格は…

以下のような人は大きな会社とかで制作チームのメンバーを目指した方が合うのでないかと思います。

  • 段取りやスケジュールをすべて自分で考えるのが苦手な人(ある程度ルールがあってそれに従って仕事したい人)
  • 完璧主義、職人肌の人(限られた時間内でデザイン以外もバランスよくできないといけないので)
  • 全工程の責任が自分なのがつらい人

入社2日目「この案件担当で!保守はこのリスト!(以上)」

せっかくなので、小さな制作会社(今いる会社)で経験したリアルな話も。

研修・教育は全くないという実情

入社2日目に「新規案件これ担当です。納期はいついつ、じゃあクライアントと顔合わせしよう」と言われました。そして後はすべて自由(言い方を変えると新人の放置。笑)。さすがに「えっ?」と思いました。

誰かの下で補助的なことからスタートとか、担当するにしても最初くらい少しは指示とかフォローがあると思ってたので。

保守にしても担当のお客さんのリストファイルを示されて、というスタート。電話がかかってきたら初めてそのサイトをみて応対するとか、そんな感じでした。

お叱りを通り越して、ため息はかなりきつかった

上記の通り、研修とか教育はなかったです。質問はもちろん可能ではあるけれども。

私の会社は裁量労働制で、新人でも普通レベルの仕事量です(その代わり最初から経験者並みの給料)。当然最初は通常の工数で仕上げられるはずがない。というわけで最初の案件は進捗状況・完成度ともにさんざんでした。クライアントからお叱りを受けたところまでは自分が未熟だから仕方ないと思えましたが、電話ごしに2回本気のため息をつかれたのはさすがに精神的にやられました。

本気ため息の威力はすさまじく、今でもトラウマ的に心に残っています。

保守も慣れていないので時間がかかるし、新規案件の制作は持ち帰りとかで疲れていたので保守関係などで単純ミスなども連発。予定などの信用もなくなって、お母さんに確認されている小学生かっみたいなメールを頂戴したりしてきつかったです。

というわけで序盤はボロボロでしたが、もともと一人で自由にやっていいよっていうのが大好きなので、今は自分に合ってるなとは思っています。大きな制作チームも経験してみたいですが。

まとめ

小さな会社で業務範囲が広い、というパターンを書いてきました。大きな会社の分業制は経験していませんが、結局どちらも一長一短でしょう。

【キャリア面】デザイン以外にも幅を広げていきたいか、それともデザインをひたすら掘り下げたいか
【性格面】一人で自由に試しながら成長したいか、指導をしっかり受けながらスキルアップしたいか

この辺りを自問自答してみるといいんじゃないかと思います。

未経験から一人制作の環境にいる私の個人的な総括ですが、未経験の一社目は制作チームに入るほうが基礎がしっかり固められそうと思っています。正直いきなり全部幅広くやるのはきついですし、どんどん社内でダメ出しとかをもらって正解を知れるほうがいいです、たぶん。

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