色彩検定3級の勉強はWebデザイン制作に役立たない?

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この記事は2019年以前他サイトに執筆したものを引越し掲載しています。

もうすぐWeb制作現場で2年目になるというタイミングで色彩検定3級を受験・合格してきました。

色の基礎も知らなかった私にとっては収穫がとても多い勉強でした。

ただWebデザインの勉強としては優先順位が低いかもと感じました。理由は主に2つ。

  1. 試験範囲のうち、Webデザインとは無関係な部分が多すぎるから
  2. Webデザインに関係する部分でも、実務に直結はしないから

以下それぞれかんたんな考察です。

目次

3級の試験範囲のなかでWebデザインに関係する割合はどの程度?

結論から言うと全範囲のうち関連があったのは3~4割程度かなというところです。※あくまで個人的な感覚です。またあくまで関連というだけで役立つかは別です。

以下もう少し詳しく試験内容を考慮した結果を述べます。

まず色彩検定協会公式HPで公表されている3級に求められるレベルと範囲を確認してみます。

3級より項目を引用すると以下になります。

色のはたらき、光と色、色の表示、色彩心理、インテリア、色彩調和、色彩効果、色彩と生活、ファッション、慣用色名

公益社団法人 色彩検定協会

ちょうど10項目です。この中でWebデザインにあまり関係ないものをまず削除してみます。

色のはたらき光と色、色の表示、色彩心理、インテリア、色彩調和、色彩効果、色彩と生活ファッション、慣用色名

(※色のはたらき、光と色…眼や色が見える仕組み自体の話なので理科に近い)

残り5項目、50%になりました。

色の表示、色彩心理、色彩調和、色彩効果、慣用色名。

これが無関係な部分をカットして残ったものですが、さらにこの中でWebデザイナーとして現場で使える(かもしれない)範囲に絞り込みます。

実際に制作に役立つのはどの程度?

以下は先ほど残った50%について公式からの引用です。

色の表示…色の分類と三属性、PCCS、言葉による色表示

色彩心理…色の心理的効果、色の視覚効果、色の知覚的効果

色彩調和…配色の基本的な考え方、色相から配色を考える、トーンから配色を考える、配色の基本的な技法、配色演習の解答例と解説

色彩効果…色彩と構成

慣用色名

公益社団法人 色彩検定協会

この中でどの部分がデザイン実務に関係が深いか?という点ですが、該当部分を太字にしてみました。

PCCS、色彩心理、色彩調和あたりです。これが冒頭で出した結論、関連は3~4割程度という理由です。

そしてあくまでWebデザインと「関連している」というだけです。これらについての3級レベルの学習が「役立つか」というとそうでもないです。

例えば新規制作で直結するかなという部分は「色彩調和」です。でも色彩検定3級では色の「組み合わせ」のみしか考えません。デザインカンプを作る時でいうと最初に色の候補を出すくらいまでの工程(とはいえ重要な工程の一つではある)しか関連しないです。実際にどの部分にどう色を使っていくか、実際色を当てていってどう調整するか、などには踏み込んでいません。

ほかに「色の表示」の中にある「PCCS」は実務で配色を決める際にも当然関わります。ですが実際に制作するときはツールを使いますので、試験に受かるように詳細を覚えたからどうということはないです。

他に新規制作と関係する部分と言えば「色彩心理」くらいですが、3級で問われるのは「緑(のイメージといえば?)→自然・安全・平和」みたいなレベルです。

もちろん色の基礎力としてしっかり押さえておくとよい知識なのは間違いありませんが、そこまで「使える」感じはしません。

なおPCCSのカラーダイヤルとトーン概念図。3級の受験対策としてはこの2つは超重要です。これを完璧に覚えて他をてきとうにするのが最速で受かるコツかと思います。

まとめると3級を学ぶことで得られるスキルとは、せいぜいとんでもない配色はしなくなる程度だと思います。

実務で「役立つ」感じになるには、ただの知識からもう一段階すすめてデザインによる問題解決ができるようになる必要があります。例えば写真の「この部分をもっと目立たせたい」といった場合に、「彩度や明度で差をつけてみよう」などというように基礎知識が役立つことがあります。ですが3級は色の三属性などの「概念」程度です。実際にどういった問題解決法があるか、また具体的なテクニックなどはでてきません。

私はWeb業界に転職する前は「目立たせる」と言えば「濃くする」しか思い浮かばないくらいのデザインセンスゼロの人でした。そもそも「彩度」「明度」自体意識していなかったですし、それを変化させて効果を生み出すという概念自体がなかったくらいです。ということで3級で学んだことは無駄とは思いませんでした。ただ普通デザインの仕事をしている人なら当たり前でしょうし、わざわざ受験する必要はなさそうです。

デザイン制作では「色彩」以外の要素、例えば「余白」「フォント」など総合的に考えて答えを出す必要があります。つまり色はあくまでデザインの一部です。もちろん色はかなり重要な要素ですが、検定で得られるのはただの知識という点も考えると色彩検定は実務に直結してくる感じはしません。

上記までで「Webデザイナーと色彩検定3級の関連度は高くない」というのが個人的な結論です。

ただそもそも検定の目的を考えたら3級を「役に立つか」という基準で見てはいけないのですが。以下はその点です。

3級はそもそも実務的な活用が想定されてない

色彩検定協会公式HPによるとそれぞれの検定の目標は以下です。

3級…色の世界への入り口〜色彩の理論や法則を基礎から学ぶ〜

2級…色を仕事に活かす〜仕事に応用できる各種技法まで学ぶ〜

1級…色彩のスペシャリストへ〜色彩を提案する力を身につける〜

公益社団法人 色彩検定協会

2級から「仕事に活かす」となっています。3級は色彩の基礎・入り口。

2級、1級と進むにつれ、実務に落とし込む力(演習や事例)も問われるようになっているようです。

が、ファッションなどWebデザインとは無関係な部分が多いというのは変わらないようです。

他の業界の色彩からも学べることはもちろんありますが、Webの実務とは噛み合わないかと。

色についてのコミュニケーションはとりやすくなりそう

学んでいて思ったのは、むしろ打ち合わせなどを行なう立場の人の基礎知識として役立つかもな、ということです。お客さんとの共通言語や説得力という意味で。そう考えるとWebディレクターやWeb営業が学ぶほうがむしろ役立つのかもしれません。

例えば、3級の範囲に「慣用色名」があります。慣用色名というのは、赤系統を例にすると「サーモンピンク」「茜色」などの呼び方のことです。これを知っていても制作では役には立ちませんが、お客さんとの打ち合わせで例えばイメージカラーを言われたときに知らないと信用が落ちるかもしれません。また知識が充実することにより彩度やトーンなどについて、コミュニケーションが円滑になる可能性はありそうです。

基礎知識にあまりにも自信がない人には3級はおすすめ

ここまで書いてきたようにWebデザイナーに色彩検定はそれほど必要ないと思います。ですがあまりにも色の意識が低かったり基礎知識がない人には逆におすすめです。

私はWebデザインを職業訓練でスタートしました。色についてそれまで全くアンテナを張ってこなかったので、なんの根拠もなく色を選んだり、彩度ってなに?という状態からでした。

受験の成果としては、実務で新規案件に取り組む際に配色で真剣に悩むようになった、ということです。それまでは悩むことすらできないほど概念がわかっていなかったわけです。

資格試験というのは特に直接的に役に立っていなくても、それに対する意識を高めるという効果があります。

その後それについてアンテナを立てる習慣がつく、という感じ。

2級やUC級は今のところ考えていませんが、また色に対する意識を高めたいというタイミングがあったら検討したいと思っています。

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